渇望の鬼、欺く狐
「雪、おいで」



 鬼からかけられた声。

 首を傾げながらも近付いた狐に、鬼の手が伸ばされた。



「ありがとう。助かったよ」



 頭を撫でられる心地良さは、いつもと変わらないのに。

 その感触はいつもより、狐の胸を打つ。



「あ、あの……」


「うん?」



 撫でられる事も、褒められる事も。

 自分が望んでいた事、そのもののハズだった。

 だけど、どうしてかはわからない。



「あ……、ごめん、その……」



 この罪悪感は何だ。



「何を謝ってるんだい?」


「え、と……、あ、部屋……散らかってる、から……」



 違う。

 そんな事が理由じゃない。

 赤子に対して強く拒絶反応を起こしてしまった事。

 何故かそこに罪悪感が募る。



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