渇望の鬼、欺く狐
『――……ろ、……い、藍……』



 ――ごめんなさい。



『……やく、…………を、……れて』



 ――ごめんなさい。



 それは遠い遠い昔の出来事。

 どうしていいかなど、理解は及ばなかった。

「それ」はあまりに突然すぎたから。

 ただ、私は。



『……っ、……だ』



 私は。



 パチリと目を開ければ、そこは見慣れた室内だった。

 久しぶりに見た夢の所為か、気分が悪い。

 体も何だか重たい気がする。

 大きく息を吐きながら視線を下に向けた事で、腕の中に居る旭の存在を思い出す事となった。



 ……あぁ、そうだ。

 拾ったんだった。



 先程自分が起こした、気紛れとも取れる行動を思い返しながら。

 視線を横にずらした事で、隣で眠る雪に気付いた。
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