渇望の鬼、欺く狐
「急にどうしたんだい?」



 再度訊ねられた事で、ようやく狐は三本のかんざしを取り出して鬼へと見せた。

 原色のとんぼ玉が放つ存在感の強さは、購入した時と変わらないまま。

 鬼の目がそのとんぼ玉へと寄せられて。

 クスリと笑う表情は、きっと気に入ってもらえたのだろうと狐の期待を煽る物。



「こんなにも選んできてくれたのかい?」



 柔らかな声が心地良い。

 その声を耳にする度に、その表情を目に映す度に。



「うん。あのね、凄い迷ったんだけど、一つに絞れなくてね? それで全部買ったんだー」



 存在意義を見付けられる。

 確認出来る。



「お前にはもう、たくさんかんざしを貰ってるのにね」


「でもあげたいのー」



 ただ真っ直ぐ。

 ただ純粋に。



「じゃあ最初は赤がいいよ」



 思いを貫いていられる。
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