黒猫*溺愛シンドローム~Plus~
「……うーんっ。よく寝た」
――それからしばらくして。
約束通り、この時間の終了のチャイムと同時に目を覚ました王子様。
起き上がって、気持ちよさそうに伸びをした。
「ごめんね?ありがとう。風歩ちゃんのおかげで…って、何?どうしたの?」
「べ…別にっ」
「……?」
振り返ったその顔を、私はまともに見られない。
だって…ねぇ?
「風歩ちゃん?顔、赤いけど…あ。もしかして日に当たりすぎた?」
「ち…違っ」
「ごめんね?俺が眠り込んじゃったせいで…」
俯いて隠していたのに…
私の変化に目ざとく気づいて、心配そうに覗き込んでくるお顔。
ち…近っ。
顔って言うより、さっき触れた唇…が。
う…わぁ…
「め…珍しいじゃない?」
話題と視線をそらすため、何とか絞り出した声。
吃ってるし裏返ってるし、明らかに変だけど気にしちゃいられない。
「アンタが“寝不足”なんて、何かあったの?」