月夜の翡翠と貴方


この感覚なら、日頃から淡く感じているものだから。

奴隷になってから、最初こそ感じていた『空腹感』も、今では慣れ、胃が食べ物を過剰に求めなくなった。

おかしいことは、重々承知である。

けれど奴隷など、皆そんなものだ。


「どっか、食いにいこー」


無邪気な子供のように、ルトは私に笑いかける。

そうして私の手を引き、歩く。

これがもう自然となっていることが、どうにも私には不思議だった。







ざわざわと、声が飛び交う。

ガチャガチャと、食器の音があちこちから響く。


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