Seven Colors

 アキラの証言により数人の警察官が暁宅に向かい、確かに死亡している暁大地を確認した。

 妙なのは遺体の状態、恐らくは死因であろう傷口である。

 数箇所の歯型、それもライオンのような猛獣に噛まれたような歯型があった。さらに遺体の辺りにはその猛獣から引きちぎられたような肉片が散らばっていた。吐き気が起きかねない惨状である。

 報告を受けた黒王は廊下を歩き、ある者のところへ向かっていた。

 暁明。ただ一人の身内である父親を失い、精神が乱れていた彼の元へ。

 黒王が足を止めたのは廊下の隅、会議室Kと書かれた小さな部屋の前。会議室という名を掲げているが、今や取り調べをする部屋としても扱っている。

 黒王が重たい扉をノックすると、冷たく趣のない音が廊下に響いた。


「黒王です、入ります」


 律義な言葉を述べるのは黒王の習慣である。少し遅れて入って来た白石も、上司に合わせて一礼した。

 会議をするにはあまりにも狭いその部屋は薄暗く、春になって間もないというのに寒い。それは今が夜だからか、この部屋で行う事がそういう雰囲気にさせてしまうのか。

 軽いパイプ椅子をひき、腰を降ろしながら黒王は目の前の少年に声をかけた。

 後ろの警官に水鉄砲を突き付けられ、肩を震わす不良少年アキラに。


「どうだ、気分は。落ち着いたか」

「おかげさまで最悪だ」

「フ……最悪か」

「笑うな馬鹿刑事! こんなもん拷問だ、早く下げるように言ってくれ!」


 拳銃にはびくともしない人間が子供の玩具で脅されている。その普通なら有り得ない光景に、黒王はやはり笑った。


.
< 10 / 28 >

この作品をシェア

pagetop