Seven Colors

「本題って……やっぱり父さんの?」

「生憎、そういうことだ」


 誰が見てもわかるほどにアキラの表情が曇る。荒くれ者で元気な少年ゆえ普段と違うその表情には重みがあり、黒王でさえも直視出来なかった。

 アキラとアキラの父は大変仲がよかった。それも世間一般から見れば困った仲である。

 喧嘩で補導され、元凶である息子を迎えに来た父の始めの一言が「勝ったか、負けたか?!」であった。「勝ったに決まってるだろ!」と全身傷だらけのアキラが答え、それを聞いていた黒王は深いため息をついたという。

 親子関係のこじれから子が道を踏み外すというのはよくある話だが、仲がよく息子に喧嘩上等だと教える親というのは珍しい。かえって厄介である。


「お前が言った通り家の自室で遺体が発見された。……ひどい死に様だった」


 アキラは顔を俯かせたまま黒王の方を向かない。泣いているようにも見えるが、涙は落としていないようである。


「俺“父さんの死体を見た”ということは覚えているけどさ、死体がどんな様子だったかまでは覚えてないんだ、混乱してて。と、父さんはどんな……」


 嘘偽りのないアキラの様子に仕方ないかと黒王が呟く。

 黒王より前に他の刑事がアキラの取り調べをしたが、町を暴走した件については認めたものの曖昧な返事であったという。

 何より“自分が燃えていた”という記憶が消えていた。混乱状態であることは間違いない。


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