ビター・スイート・ラヴ
 やがて氷水で冷やされ、木桶に入った冷酒が運ばれてきた。店員がそれぞ
れのガラスの盃になみなみと冷酒を注いで、その場を立ち去った。



 真紀は冷酒を一口飲んでみた。確かに美味しい。しかし、いい気になって
飲み過ぎると、冷酒だけにかなり酔っぱらいそうだ。



 つまみの焼き物が次々と運ばれてきた。どれも絶品だ。日頃、飲みつけて
いる谷川お奨めの店だけあると真紀は感心した。



 谷川は少し酔いが回ってきたのか東氏の人柄や自身の仕事、また事務所の
展望などを得意げに真紀に語り始めた。



 真紀はこんなに饒舌な谷川を見るのは初めてだった。谷川の意外な一面を
発見したと同時に、少年のように熱く夢を語る谷川に魅力を感じた。



 二人とも冷酒をかなり飲み、店を出る頃には足もとが少しおぼつかなかった。



 真紀が腕時計に目をやると、今ならなんとか終電に間に合いそうだった。



 明日は朝から取材が入っているので、これ以上、谷川に付合うわけにはい
かない。あともう一件寄って行こうと誘ってくる谷川を無理矢理タクシーに
乗せて駅へ急いだ。
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