六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「自分が死ぬ間際に気になるのが、瑛のことか。
あいつめ、よほど惚れられたのだな」
くつくつと喉をならす姿は、薄汚い獣そのものだった。
「哀れな姫に教えてやろう……。
瑛の両親を陥れたのは……他でもない、私自身だ」
「……!!」
今度こそ。
自分の中に、自分が帰ってきた。
怒りが。
悲しみが。
麻痺していたものが、完全に蘇った。
「なんて酷いことを……!!
兄弟を殺して、まだ幼かった甥から、母親を奪って!!
それでも人間なの!?」
「何とでも言え。
痛くも痒くもないわ」
「っ、ざけるなあぁあぁ!!」
渾身の力で、足をばたつかせた。
しかし、大きな身体に押さえられて、思うような攻撃ができない。