六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「何事だ!」
苛立った滋が、あたしの手をつかんで立ち上がる。
肩を抜かれそうな勢いで、何とかついていくと。
滋が捲り上げた幕の向こうには、驚くべき光景があった。
「な……っ!?」
滋も声を失う。
寝所を何重にも取り囲んでいた忍達が、
ある一角から一人、また一人と倒れていく。
それでもやまない読経と、悲鳴と、怒号で、
砦の中はカオスと化していた。
「族長!」
一人のくの一が、滋の足元に膝まづいた。
「何事だ、これは!」
「恐れながら、申し上げます……!」
「……まさか……!」
息を飲んで、砦を見渡した。
まさか。
まさか。
緊張で高鳴った胸に、くの一の声が響いた。
「反乱でございます、族長……!」
その声の最後は、白煙にまかれてしまう。
「!!」
寝所に、何者かが煙幕を投げ込んだのだ。
視界と呼吸の自由が奪われる。