六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「ぐっ!」
もうもうと巻き上がる煙の中で、うめき声が聞こえて。
つかまれていた自分の手が、自由になった。
ヒリヒリと痛む手首を、押さえる暇もなく。
ゆるんだ帯を、体ごと引っ張られた。
「きゃあぁっ!!」
突然、体が宙に浮く感覚がして、思わず叫んでしまった。
何者かが、あたしを抱いて跳んだのだ。
そう。
背中から、あたしを抱いて。
初めて会った時と、同じように。
「おのれ……っ、逃がすか!!」
その叫び声は、遥か下から沸き上がってきた。
そちらを見てしまったあたしは、目眩を覚えた。
岡崎滋や琴さん、たくさんの忍達が、あたしを見上げている。
どうやら自分は、砦を横に支える柱の上にいるようだった。
「きゃ、あぁぁぁっ!!」
ぐらり、と体が傾く。
落ちる――。