シャクジの森で〜青龍の涙〜
エミリーは自らのお腹のあたりにある大きな鋭い爪に気を付けながら、ゆっくりと離れた。



『ん?そいつは、ミシェルか?』



エミリーの顔くらい大きな丸い瞳が、ギロりと動きシャルルを見る。



「あ、ちがいます、この子は、シャルルです」



名を教えると大青龍は、あーそりゃあそうだなあ。生きてるわけないか。と言ってふごふごと鼻を鳴らした。



「・・・あの、大青龍さんは、どうしてここにいるのですか?風の谷には戻らないのですか?」

『龍は年を取ると、身を終える前に身を分けて子を作る。あの時元気に空を飛びまわっていたのがいただろう・・・あれが、ワシの子だ。ワシは、長く生きた。命を終える前に、リシェールの歌が聞けて良かったよ』



遠くを見るように、大青龍の瞳がエミリーの背後あたりを見つめる。

その大青龍の額のあたりに、エミリーは動く小さなものを発見した。

なんだろう、と注視していると、なんだか鳥のように見える。



「ピピッピ」

『おおおー!忘れておった。コイツを案内せねばいかんかったぞ』



つい、寝ちまった。

そう言って大青龍は大きな体を動かした。

鳥は動く身体の上でバランスを取るようにバサバサと羽ばたいている。




『ん?もしや、天使。お前らも迷子か?ワシは今、この平原に迷い込む者を見つけ次第案内しておる。無論、無償だぞ?歌を歌えなどとは言わん』

「いいえ、わたしは、迷子になってるお方を探しに来たんです。背が高くて銀髪の、素敵な殿方を見ませんでしたか?」

『いや、見てないぞ?あーいや、見たかな?いかん、近頃物覚えが悪いな』



うーん、と考えるようにする頭の上で、鳥は忙しなくぴょこぴょこと動いている。



「あの、いいです。どうぞ行ってください。ほら、小鳥さんが待ってるわ」

『おおそうだった!では、天使、またな!』

「さようなら」



大青龍はふわりと浮かぶと、エミリーの背後の方に向かってゆっくりと飛んで行った。


何もない平原での思わぬ出会いに胸があたたかくなったエミリーは、再びアランを目指して歩き始める。

立ち止まって大青龍と話していたせいか、疲労が回復したように感じる。


足取りも軽く進んでいると、糸のように細かった光の線が少しずつ太くなっていることに気が付いた。

それは、エミリーが動かずにいても徐々に太くなっている。


と言うことは・・・


まさか――――
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