死神少年
青い月
カラカラと渇いた音を鳴らしながら、その微弱なライトの光と月明かりを頼りに、俺は自転車を押し進めた。
ひどく気疲れしているのか、自転車を漕ぐような気力は残っていない。
押して歩くのが今の自分には精一杯だった。
「そういえば」と、横ででつま先を真剣に見つめながら歩く死神に、俺は顔を向けた。
だが、あまりに幼いその歩き方に思わず吹き出しそうになる。
「ん? なに笑ってんだよ」
「別に。ところで、死神に名前とかってあるのか」
「あるけど、教える必要はないだろ」
死神は何だそんなことか、と言わんばかりにまた視線をつま先へ戻す。
「なんで、教えろよ」
「嫌だよ、ダサいから」
「じゃあ、何て呼べばいいんだよ」
「好きなように呼べよ」
「だったらこれからモヤシって呼ぶぞ」
「モヤシはお前だろ?」
「うるさいな!」
俺は押していた自転車を止めて叫ぶ。
「でも、さすがにモヤシは……」死神は曖昧に呟きながら顎(アゴ)に手を当てて俺の先を歩く。
「いいから、カッコつけてないで教えろよ」
死神は観念したように「わかったよ」とため息をつくと「言っとくけど、これは仕事用で本当の名前じゃないからな」と言った。
「わかったってば、それよりほら、名前は」
「……ジノ」
「へぇ、ジノか」
「今、だせーって思ったろ?」
死神、もといジノはグイッと近づける。
「まぁ、いいけど」そういってジノは顔を前へ向ける。