死神少年
月の青白い光は、彼の白い肌を更に白く透き通らせる。


まるでガラス製品を見せられているようだ。

汚れを、濁りを知らないその黒く澄んだ瞳はまるで、幼い子供の目そのものだった。


不思議だ、ジノは自分よりも背が高いし、輪郭(りんかく)が細くて、俺より少し年上に見える。


なのに、時々彼が物凄く幼く見える。本当は年下なのではないか、そう思ってしまう時がある。



「綺麗だ」



俺は呟いた。 その呟きに、ジノは苦笑する。



「おい、彼女と話せないからって、俺をくどき落とそうってんならやめてくれよ? そういう趣味はない」



「バカ、月だよ。 月が綺麗だって言ってるんだ」



ジノは「あっ」といって「そう」と続ける。
その間抜けた声に、俺は小さく笑う。



「お前って、子供みたいなとこあるよな」

「…………。」

「手でも繋いでやろうか? でなきゃ……」



迷子になりそうだ、とふざけ半分で言おうとしたその瞬間、喉を掴まれ、近くの塀に身体を押し付けられる。

一瞬何があったか分からなかった。

それほどに、素早い動きだった。


ガタンッと豪快な音を立て、ジノの後ろで自転車が倒れるのと同時に、ジノが伏せていた顔を上げる。



「あまり、俺を見くびらない方がいい、音穏。今度ナメた口きいたら……」



すっと首から手が離れたと思ったら、今度は代わりに額を手を押し当て、グイッと無理矢理顔をあげられ、耳元で囁かれる。



「あんたは彼女と仲良く、あの世行きだ」



その囁きに、体中の動きが瞬時に止まる。心臓の鼓動すらも止まった気がした。


その冷たい瞳はまっすぐに俺を捕らえ、見つめる。



「なんてな、冗談だよ。あんまり調子こくなって事だ。」



ジノは小さく笑うと、倒れていた自転車を起こす。



「しけた面してねえで、さっさと帰るぞ。あんたが思ってるほど、時間は余っちゃいないからな」


そう言った奴の漆黒の瞳の中で、月明かりが冷ややかに青く光っていた。



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