死神少年
liar
栗色の細い髪を、太陽光に反射させながら、忙しそうに一人の少年が俺の横を透り過ぎて病室を出てていく。


美しい、と

触れたい、と思った。


あの髪に。



人間相手にこういう気持ちになるのは初めてかもしれない、と少し自分に驚く。


少年はネオンというらしい、音が穏(おだ)やかだとかいて音穏。 珍しい名前だ。


俺は死神だからよくわかんないけど、あまり聞き慣れない名前ではある。 少なくとも俺にとっては。


まぁ、少年の話はさておき、用は少年ではなくその少年と話していた女にある。


見ようによっては美人だが、俺の好みではない。 だが文句を言ったところで、この和美とかいう女が俺好みの美人になるわけでもないし。



「早く終わんねーかな」



思わず口から出た独り言に、女が怪訝(けげん)そうな顔でこちらを向く。


一瞬ドキリとしたが、珍しい事じゃない。人間の中には時々、霊感が強い奴がいる。しかも中には死ぬ間際になって、突然能力が開花する者もいる。


まぁ俺としては、能力のある人間の方が楽だし、いい話し相手になってくれる。



どうやら今回は当たりくじを引いたようだ



「スゲーな、俺が見えるんだ」

「……死神?」



俺はヒューッと高く口笛を吹くと、拍手をする。



「当たり、なんでわかった」

「さっきからずっと病室にいたでしょ?」

「気付いてたんだ」

「もし、あんたが普通の人間なら、音穏くんが気がついて、あいさつくらいしてる筈」

「なるほど、確かに少年は俺に目もくれなかったな……それで?」

「普通じゃないってことよ、あんたは」





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