死神少年
テスト
「死神? 悪魔でも疫病神でもなくて?」
「俺をあんな腐った連中と一緒にするなんて失礼な奴だな」
言いながら、奴は俺の眉間にピストル銃口を当てる。
どうやら、今時の死神は大鎌ではなく銃が主流らしい。もっとも、彼が死神であればの話だが。
「ちょっと待てよ。あんたが死神だって言うなら俺は……もうすぐ死ぬのか?」
死神は死期が来た人間の魂を狩るとよく言われているが、まさか俺に死期がきてこいつが魂を狩りに来たのだろうか。
「オイオイ、話はちゃんと最後まで聞けよ。 ったく人間っつーのはせっかちでいけない」
死神は銃を下ろすと肩をすくめてわざとらしいため息をつく。
「此度(こたび)俺は、お前のテストへの参加希望を確認しにきた。」
「テストって……一体何の? 」
「死神のテストだ。 パスすれば死神になれるぞ」
「死神になりたいなんて言った覚えはない」
予想していた答えと違ったのか、死神は少し驚いた顔をして「へー」と曖昧な反応をした。
「じゃあテストは受けないのか?」
「当たり前だ。 受けるなんて答える奴は相当な暇人だろうよ」
「もったいねえな、お前には才能があるのに」
とても物事を惜しんでいるような態度には見えないが、これはこれで彼なりに惜しんでいるのだろうか。
「何を根拠にそんな事言ってるんだ」
「お前は俺が見えるだろう?」
「ああ、けどなんで?」
「さあな、でも死神の俺が見えるって事は何らかの能力があるのかもしれない。 例えば、霊力とか」
「バカバカしい。 今の俺に必要なのは霊力よりも理解力だよ。 そうすりゃもうちょっとマシな単位が取れる。」
俺は吐き捨てるように言うと、ドアに手をかけた。
「どこ行くんだ?」
「風呂だよ。こんな話にいつまでも付き合ってるほど、俺はイカれた人間じゃない」
死神は何やら意味ありげに笑うと「へーそうかい」と呟いた。