遊びじゃない
いとも簡単に二人の人格さえ変えてしまうほどの存在。
赤の他人の二人が出会って、結婚して、望まれて生まれてきた天使は、もう二人にとっては唯一無二の存在で、かけがえのない大切な宝物。
「……やだ、なんで…。」
やっと止まったはずの涙がポチョンと湯船に吸い込まれる。
美織のベビーの誕生に、嬉しかっただけの胸の中が、自分でもわからない感情にじわじわ侵食されていく。
悲しいとか、寂しいとか、羨ましいともわからない……敢えてあてはめるのに近い感情というなら……不安、なんだろうか…。
美織のことをとても誇りに思うし、妬んでいるわけでも、喜べないわけでも絶対にない。
ただ一番身近な存在だった親友が離れていくような、置いていかれるような感覚に、空っぽの自分が誰にも必要とされていないような焦燥感。
なんで泣いているのか、涙を流さなければならないことなのかはよくわからないけれど、緩みきった涙腺は、乾くことを諦めたように次々と雫を生み出しては押し上げていて。
「…っ、わけわかん、ない。」
自嘲気味に笑ってみれば余計に流れる涙に、止めることを諦めて声を上げて泣いた。