遊びじゃない

「なに。」

「何回も掛けたんだよ~?何やってたの?寝てた?」

「何の用?」

「何の用って…つれないなぁ。僕ね、今日は接待だったんだけど、先方の都合がわるくなっちゃって~、で、今まで先輩に飲まされて~。」

きっと千鳥足で歩いている所為で、途切れ途切れに大きくなったり小さくなったりする声。

「それでね、その先輩が鶏皮好きでね~。その鶏皮見てたら、なんかまおちゃんの顔が浮かんできてね~。」

ついさっきまで狭いバスタブで独り涙を流していた私には、いつもと変わらない間延びして滑舌の悪い話し方も、私の顔が浮かぶと言った酔っ払いの言葉も、信じられないくらい心の中を暖かくさせてくれるようで。

「……みしい。」

「え?」

「さみしいよ。」

迂闊にも本音が出た。

泣いていたせいか、口の中がカラカラに乾いていたせいか、思ったよりも小さく、掠れた声。
< 156 / 266 >

この作品をシェア

pagetop