遊びじゃない
「僕、裸眼でずっと過ごしてると気持ち悪くなっちゃうんだよね……なんか、この見えなくてぼやっとした感じとか………」

「いや、それならさっさと新しい眼鏡取ってきてくれたらいいし」

「…もう結構限界で。」

「だから、取ってきなよ」

「まおちゃん…お願い。寝室のベッドサイドに……」

雪山で意識を失うかのようにだんだんと横たわる。

その横顔は冗談なんかじゃなくて、うっすらと額に汗も滲んで見えて、こんなことでほんとに吐くのかと思ったら躊躇いもなく足が寝室を探して動き出した。

自分の家よりは広いけれど、それとなく寝室らしき部屋はどこだかわかるもので。

リビングの奥に位置するドアをそっと開くと、目の前にはそれこそベッドしか入ってこない。

左手で壁を探って電気を点けるけど、やっぱりベッド以外には家具のないシンプルだけど、ゆうの匂いで充満した部屋。

いわゆる男臭い部屋なのに、なんだかこのままベッドにダイブしたいような衝動に駆られて、慌ててベッドサイドボードの目覚まし時計の横に置かれている眼鏡を取る。
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