遊びじゃない

今がもしも真昼間でコンタクト装着時なら、絶対言えない、というか言えない言葉だけど。

相手の目がどこにあるのかさえわからないような状況だから、恥かしさなんて微塵も感じない。

だって、暗闇に向かって呟いてるようなものだし、当の本人からは何のリアクションもないわけだし。

これがほんとに私の呟きだけじゃないってことは、両手のぬくもりだけが教えてくれる。

「ちょっと、なんか言いなさいよ」

さすがに放置とかはありえないから。左手でゆうの顔をペチペチと軽く叩く。

「…っ、僕、ほんとダメだ……」

いつもとは違う、喉の奥から絞り出すような低めの声。右手を痛いくらいに握られて、反射的に引っ込めようと力を入れると、手の甲に柔らかい感触が触れる。

「…どうしよう…まおちゃん…」

それが唇だということは、吐き出される言葉とともに触れる吐息ですぐにわかるけども。

「どうしようって…?」

てっきり抱きついてでもくると思った予想に反して、痛いくらいに握られた手の意味がわからない。
< 259 / 266 >

この作品をシェア

pagetop