新撰組のヒミツ 弐
元々怪しくはあったのだ。あの立花が勝手に雪のもとを離れて長州の仲間になるのも考えられない。
雪はただの裏組織の女主人ではなく、長州の流れをくむ尊攘派の一派であり、それに服従している立花もやはりその手足となって動いていたのだ。
そして、かつての光も。
あの女は今も昔も、光を利用することしか考えていない。
「そうだ。だが、それが全てではない」
光はその言葉に唇を噛み締めた。
やはり、そうなのだろうか。
「……私の先生を殺したな」
以前、立花が言っていたことを信じるならば、先生は暗殺を生業とし、長州にも通じていたという。
だが、先生は突然暗殺から足を洗い、行方をくらませた。理由は知らない。
だが、深い内部事情を知る先生は口封じとして始末されることになった。そこで、長州の一派であり、先生と同様に暗殺稼業を営む雪が下手人を差し向けて殺した。 そういう予想だ。
何も知らない光は、運悪く先生を消した組織に入ってしまった。頭を下げ、二年間も言いなりになり、仇の機嫌を取り続けていた。なんと滑稽な話か。
雪が情報を漏らさないのも頷ける話だ。もし、当時この情報が手に入っていたら、光は躊躇いなく主人に手をかけ、脱走していただろう。
雪は雪で、光の存在を持て余していたに違いない。光が殺したがっていた仇とは雪自身なのだから。
しかし、確かに口封じをしたのは雪だが、雪には雪なりの正当な理由と事情があって先生を消したのであり、正確には仇というわけではない。
彼女は、光に情報を与えず道具として使えるだけ使い、逃げ出したところを始末することに決めた。光が脱走すれは、裏切り者への断罪という名目で自分に復讐をするかもしれない危険分子をちょうど消すことができる。
しかし、光が新撰組に逃げ込んだことで、殺さずに和解し生かして利用しようと方向転換した。決して見当違いな推論でもないはずだ。