新撰組のヒミツ 弐
宮部ははっと我に返ると、自分を鼓舞するように咆哮を上げて襲ってきた。
光は一太刀、二太刀と受け止め、直ぐに反撃に転じる。
近距離から投擲したクナイによって、敵の注意を引きつけて退路を絞り、その隙に右斜め後ろの死角から腿を貫いた。
痛みに呻く宮部の声。彼を貫いていた刀を抜くと、右の脚から血が水のように噴き出す。
力が入らないのか、彼は膝を折った。
宮部がゆっくりと振り向き、光を見上げた。その目には驚きと悔しさと恐怖が見える。
しかし、宮部は矜恃を捨てていなかった。
「──貴様の……貴様の汚れた刀には掛かって死ぬまい……。そこで見ておれ、 これぞ武士よ!」
宮部は太刀を鞘に納めると、自らの着物の前をはだけた。
脇差を抜く宮部を見て、「まさか」と息を呑んだ。
心臓の鼓動が速まる。
自分でも分からないまま、光は「待て……!」と宮部に手を伸ばしていた。
「介錯無用……!」
恫喝のような宮部の声に光は動きを止めた。いや、その声に籠る覇気に気圧され、動けなかったのだ。
刀が肉を貫く音、歪む宮部の顔、身体が床に倒れ込んでも尚、光をきっと睨み付ける二つの目玉──何の運命の悪戯だろう。
敵に命を奪われまいと自らの手で命を絶つその壮絶な死に姿に、光の全意識が持っていかれる。
部屋は痛いほどの静けさに沈んでいた。光は一人、死体に囲まれて佇む。
「……見事です」
自然とその言葉が口から零れ落ちた。
──その死に絶えた武士の隣に、泣き叫んでいる自分の姿が見えた気がした。