あのこになりたい
「あんたうざい…」


私は綾に向かって言った。


綾は突然のことに顔がこわばった。



「咲…?」


私はそのまま続けた。



「いちいち頼んでもないのに報告しないでよ。自分が幸せだからってみんなが幸せってわけじゃないんだよ…」


綾は何も言わずに涙目になって私を見ている。



「綾は自分が恵まれてるから、わかんないんだろうけど。優しいお母さんがいて甘やかされて育って、毎日テニスのことだけ考えてたらいいんだから。楽でいいよね。努力しなくても周りから愛されて、幸輔にも好かれて」


綾は泣いていた。


顔も目も真っ赤にして。



「ずるいよ…綾ばっかり。私こんなに頑張ってるのに。私がどんな気持ちで綾と一緒にいたかわかる?どんなに惨めだったかわかる?なのにわざわざ自慢話まで聞かなきゃならないの?」

私は今にも出そうな涙をこらえた。



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