call my name
食事をしながら、少しお酒も飲んだ。
例の先輩が苦手なことを言うと、美咲も苦手だということを知った。
でも、それ以上にいい先輩が多いことや、シフト制で休みを作ることができるということも聞いた。
返信はすぐに美咲に来て、今月の半ば頃に一度マネ希望の人達で集まって欲しいということだった。
「そういえばさ」と、美咲が数缶目のお酒の蓋を開けながら口を開いた。
その缶を呷りながら、一つ質問を投げかけてきた。
「その花見の時に紗雪を連れてきてくれた男の子って誰なん?」
「え? 何のこと?」
「え、抱えて連れてきてくれてはったで子やで?」
少し考えてみるが、思い当たる節がない。
連れてきてくれた?
誰が?
「あー、あたし多分その記憶ないんだよね。飲みすぎて。二回目にトイレに立ったときの帰り道からのさ。だから、気付いたら部屋で寝てた」
「そうなんや。あたしも結構酔ってたけど、綺麗な男の子やった気がするんやけど」
「ふーん……。あぁ、そういえば、これ見つけてくれた人かも」
身に着けているネックレスを人差し指で持ち上げ、美咲に見せた。
会った時は暗がりで、顔をはっきりと見ることはできなかったが、若干長めのゆるいパーマのような髪型に、すっと整った目鼻立ちが印象的だった気がする。
「へぇ、それ落としたん?」
「花見の時にね。本気で焦ったよ」
「ずっと付けてんの、それ」
「うん、貰ってからはずっと」
「カレシからとか?」
「いたことないし」とあたしは笑った。
「……カレシではないけど、大切な人からの貰いもの。正確には、幼馴染みからの誕生日プレゼントなんだけどね」
自分が女々しくなるからあまり人には言いたくないんだけど、お酒も入っているし、美咲にならいいって思ったから。
この話を人にするのは初めてだった。