call my name
そこからの記憶がない。
起きた瞬間、ここがどこだか分らなかった。
辺りを見渡して、自分の部屋のベッドで昨日着ていた服のまま寝ていたことが分かった。
もちろんのごとく化粧もしたままだ。
身体を起こそうとすると、頭に酷く鈍い痛みが走った。
ズキズキと頭の芯にまで響く。
……これが二日酔いってやつなのかな。
しばらく動けそうにもなかった。
気持ち悪さはあまりないけど、とにかく頭が痛すぎる。
とりあえず眠って、痛みが治まってからいろいろと考えよう……。
頭痛を振り払うように再び目を閉じて、深く深く眠りに落ちた。
結局、痛みが治まったのは夜になってからだった。
まだまだ重い身体を起こして、脱衣所へと向かった。
シャワーを浴びて、頭をすっきりさせる。
昨日何があったのかを思い出そうとするが、やはりトイレに行ってそこから出てからの記憶が飛んでいる。
誰が部屋まで送ってくれたんだろう……。
ダメだ、思い出せない。
ベッドの横に置かれていた鞄を開け、中を確認する。
携帯、財布、鍵……。
特に無くなったものはないと思って、ふと胸元に手を当てたときに気付いた。
「……あれ?」
いつも身に着けているネックレスがなかった。
焦りが一気に訪れる。
嘘でしょ……。
鞄やベッドの上を探すが、見当たらない。
部屋中を見て回ってもない。
昨日の花見にはつけていったから、まさか……。
一気に脱力感と虚無感が心を襲う。
どこで落としたのかもわからない。
どこを探せばいいのかもわからない。
「どうしよう……」
とりあえず電池の切れていた携帯を充電器に繋ぎ、電源を付けた。
一番に目に付いたのは、新着のメールだった。
開いてみると、見たことのないアドレスからのメールだった。
“落とされたネックレスを持っているので、明日の夜10時に公園でお渡しします”
メールの内容はこうだった。
時間は9時半。
嘘か本当かはわからないけど、行ってみる他に選択肢はない。