[短編] 昨日の僕は生きていた。
 教室の僕の席には百合の花が生けてあった。
 イジメにあっているみたいだ……。(実際に死んでるんだけど)


 クラスメイトはみんな、普通の顔をしている。人一人いなくなっても、クラスの日常にはさほど影響はないのだと知った。


(学校に来たはいいけど……暇だ。香織ちゃんと話せないし)

 昨日までよくつるんでいた友人のもとへ行ってみる。

 相変わらず何人かで馬鹿話をしているだけだった。僕の話なんてちっとも出てこない。


(死ぬってこんなモンかぁ………)


 なんだか想像と違った。
 ちょっと寂しい。





 HRが始まると、担任が教室に入ってきた。
 ゴリラみたいな体育会系の先生で、生前はみんなで“ゴリ夫”って呼んでた。懐かしいな。

 とりあえず僕は自分の席の上を漂っている。

 ゴリ夫は顔に似合わない、重い表情で静かに告げた。


「知らない者が多いと思うが……昨日、桜木雪彦が亡くなった。」


 僕のことだ!
 途端にクラスがざわつく。僕が事故に遭ったことはみんな知らなかったんだ。

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