[短編] 昨日の僕は生きていた。
 教室を飛び出した香織ちゃんは廊下にいた。立ち止まっている。


「香織ちゃん……」

 僕と話をするために廊下に出てくれたのだろう。

 彼女は顔を伏せていた。長い髪で隠れて表情が伺えない。


「どういう事、香織ちゃん……」

 するとようやく彼女は口を開いた。

「ゴメン。嘘ついた。雪彦、あんたは自殺したのよ」

「――うそぉ…?」

「本当よっ」

 何で嘘をついたのか聞きたくても聞けなくて、僕は口を開いたまま何も言えないでいる。

 でも、聞かないわけにもいかない。

「何で嘘ついたの……?」

 香織ちゃんは今度は強い口調で言った。

「――雪彦が自殺した原因は、あたしだからよっ!」

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