君の知らない空
早く始業のチャイムが鳴らないかと、私は祈っていた。
リフレッシュコーナーの隅に連れられた私を、山本さんと野口さんが見据えている。背丈は山本さんが私よりも頭ひとつ分ほど低く、野口さんは私と変わらないはずなのに大きく感じられる。
まるで自分が小動物にでもなったような気分。
何か悪いことしたかなぁ……
頭の中でぐるぐると、何度も思い返してみても心当たりはない。
山本さんと野口さんは顔を見合わせ、大きく息を吐いた。二人の表情は強張ったまま揺るがない。
「江藤君ね、昨日休んでたじゃない?
一昨日の帰りに駅で絡まれて、怪我させられたんだって」
山本さんの口から発せられた言葉が、ぎゅっと胸を締め付ける。
昨日、優美の言った『報復』という言葉が鮮明に脳裏に蘇った。
「え、怪我? 月見ヶ丘の駅で?」
胸が苦しくなる。
「そう、月見ヶ丘の駅前で、カバンが当たったって言い掛かりつけられて、いきなり殴られたそうよ」
私が私夕霧駅でひったくりに遭った一昨日の夜。同じ夜に江藤が怪我を……なぜか他人事ではないような気がした。
「相手は3人、チンピラみたいな若い人だったらしいわよ、怖いわね……」
山本さんと野口さんは顔を見合わせ、ふぅと溜め息を吐いた。
すると、リフレッシュコーナーの前を江藤が過ってく。
左の頬には大きな絆創膏。