君の知らない空
私たちは課長らに見送られて店を出た。
駅前の時計台を見上げたら、9時を少し回ったところ。
月見ヶ丘駅前はまだ多くの人で賑わっている。近隣企業の送迎バスが通勤者を下ろして、駅前のロータリーをぐるりと回って戻っていく。
「あーあー、タイミング悪いなぁ、バス着いたばかりかぁ……電車混んでるよ」
「どうする? 電車、一本遅らせる?」
つい、いつものように訊ねた。駅前のファーストフード店で少し時間潰していこうかと。
「だめだめ、遅くなったら橙子の帰りが心配だもん」
優美は大きく首を振る。
ドキッとした。
一気に酔いが覚めてく気がした。
意識してしまって、余計に不安になるじゃない……
「大丈夫だよ、子供じゃないんだから。それに一昨日よりもまだ時間早いし」
笑って返したけど、不安は消えない。
一昨日はとっくに10時を過ぎていた。今日は一時間は早いし、昨日だって今ぐらいの時間に霞駅から帰ったんだ。
自分に言い聞かせる。
昨日は彼に知らん顔されたから、不安になるどころじゃなかったんだけど。
私の不安を察したのか、優美がにこっと笑った。
「ん、でも今日は帰ろう。明日も仕事だし」
駅の改札口を通り抜けて別れを告げ、私たちは別々のホームへと向かった。優美と私は反対方面の電車で帰る。
反対側のホームで、優美が手を振っている。到着した電車に乗り込んで、電車が出て行くまで優美はずっと手を振っていた。