君の知らない空


改札口を出た彼が歩いていく方向を確認して、私はすぐに駐輪場へと駆け込んだ。急いで自転車を出して、彼の向かった方へと漕ぎ出す。
高架下の方へと。


きっと一昨日も、こうして夕霧駅で降りて高架下の方向へ向かったのだろう。
そして、ひったくりに遭った私を助けてくれた?


どこに行くんだろう。


彼の背中を見とめた私は自転車を下り、跡を追った。一定の感覚を保ちながら、決して気づかれないように。


胸がドキドキして苦しいのは、彼を追っていることへの罪悪感か。彼を思う気持ちのせいか。


正直なところ、まだ私は分からない。
自分自身の気持ちが。
私は本当に彼のことを好きなのか。
本気で好きになろうとしているのか。


分かっていることは、こうして跡を追いたいほど気になる存在だということ。


それと、別れて半年経った今も桂一を忘れることが出来ていないということ。


だって私は、未だに桂一の電話番号もアドレスも消すことが出来ずにいる。
ふとした拍子に、私の中に眠る桂一がいともたやすく蘇ってくる。


私にとって桂一は、初めて付き合った人だった。


高校生の頃にも好きな人はいたけど、好きと思うだけでそれ以上のことは何もなかった。付き合いたいとか、とくに考えもしなかった。


それよりも周りの友人と一緒にいることが楽しかったから、彼氏なんていなくてもいいと思ってた。


短大に入ってバイトを始めて、桂一に出会えたことが私を変えたんだ。


< 119 / 390 >

この作品をシェア

pagetop