君の知らない空


予定外のクロワッサンを買って店を出たら、桂一と先輩の姿はもう見当たらない。探しているのは、もちろん小川亮だろう。ビル近くに停まっていた自転車は、やはり彼のもの。この火事に彼が関わっているに違いない。


それにしても、美香の兄はどうして怒っているのだろう。美香の兄は『綾瀬』というらしい。父親だと言ってた人と同じ姓、なのに美香と姓が違うのは何故だろう。


すっきりしない気持ちのまま、月見ヶ丘駅に向かった。これから霞駅に行く。昨日、沢村さんに教えてもらった彼の住所へ。


霞駅の改札口を出て、大通りを歩き始めた。ショッピングモールのある駅の南側へと。


歩き始めてすぐに、大通りをすごい勢いで車が走り抜けていった。なんて荒っぽい運転なんだと振り返ると、白いセダンに真っ黒なワンボックスが後に続く。大通りを南から北へと猛スピードで走り抜けた車は、間違いなく美香の兄の車だった。


病院に行くつもりだ。
なんとなく察した私はすぐに方向転換して近くのバス停へと行き、時刻表を見た。行き先は市民病院。あと5分も待てば、バスは来るようだ。
よし、待とう。


美香の兄は、病院に入院している菅野の元へ向かっているはず。ということは、あの火事も美香の兄に対して仕掛けられたものということかもしれない。


バスに乗り込んだ私の胸が疼いていた。もし小川亮が関わっているとしたら、何をしたというのだろう。美香の兄を狙った彼が引き起こした火事だとしたら……
私の知らない冷酷さを、彼は持っているのだろうか。


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