君の知らない空
「怪我、酷いんですか?」
「腕の切り傷は大したことないけど、肋骨折ってるからなぁ……立ったり座ったりする時は気をつけて、そっと動いてやってよ」
彼に尋ねたのに、周さんが答えた。おそらく、彼は『大丈夫』としか答えないからだろう。それとも、彼に話す間を与えないつもりか。
「昨日の事故、ですか?」
「そのとおり。でも、もう忘れなよ」
人差し指を私に向けて、周さんが怖い顔で見下ろしてる。
忘れろと言われて、簡単に忘れられるはずない。あんなに不安だったのに、怖い思いをしたのに。
「忘れろって簡単に言わないでよ、会社や家に連絡してくれたことも全部話してくれないと、私だって納得できないんだから」
吐き捨てるように言うと、周さんがじっと私を睨んだ。ちょっと言い過ぎたかもしれない?
「納得するもしないも俺らには関係ない。お前が勝手についてきたんだ。俺は以前に止めたはずだろ? 自己責任だと思って諦めろ」
ぬっと顔を近づけて告げた周さんの目は、今まで見た中で一番冷ややかで怖いと感じた。
確かに、ここについて来たのは私の勝手かもしれない。でも……
「私は、彼のことが気になって……彼と一緒に居たかったからついて来ただけ、周さんについて来たんじゃない」
「言ってくれるよなぁ……亮と一緒について来たって、何にも出来ないくせに」
周さんが舌打ちして、顔を逸らした。くしゃっと髪を掻き上げ、テーブルを挟んだ向こう側の床に座り込む。そして頬杖をついて、大きな溜め息を吐いた。
「舜、少しだけ話してもいいだろ?」
彼が、ぽつりと零す。
周さんは目を逸らしたまま、再び小さく息を吐いた。