君の知らない空
「どうしたの?」
訊ねたら、
何も言わず私の方へと自転車をぐいと寄せてきた。
高架下に並ぶ自転車が途切れた空間に、自らの自転車を停めるかのように。
私を壁際へと追いやるように。
不可解な行動だったけど、私は桂一に促されるまま高架下の壁を背に立っていた。向かいに立つ桂一は目を少し伏せて、何かをためらう仕草を見せる。
どくんと、大きく脈打った。
桂一の顔が目の前に迫ってくるから、
自然と目を閉じた。
唇に触れた温かく柔らかな感触。
ふわりと大きな波に抱かれて、
溢れ出す涙。
付き合ってから四ヶ月目。
普通の人たちに比べたら遅いのかもしれないけど、初めてのキスだった。