君の知らない空


私は突きつけられた事実を、懸命に整理しようともがいていた。


課長が、美香のことを暴露したから? それしか理由は考えられない。余計なことを部外者に話したから?


それは、誰の指示なんだろう。
美香の父親だとしたら、行方不明だと言ってたのはずなのに、どうして彼に指示することができたのか。


それに、彼らの仕事は綾瀬を狙うだけではないのか。どうして美香は、兄を狙う彼らと知り合いなんだろう。彼らが兄を狙っていることを知っているんだろうか。


いろんな疑問が渦巻いて、なかなか浮上できない。


「どうして課長を? 白木さんを陥れようとしたから?」

「そういうことだろうな、俺たちは指示に従っただけ。詳しい事情は知らない」


彼に尋ねたのに、周さんが割って入ってきて答えた。早々に話を終わらせようとしているんだ。


「誰の指示なの? 白木さんのお父さん? それとも、白木さんから?」

「だから……」

「彼女からの指示だ」

私を黙らせようと言いかけた周さんを彼が遮った。このタイミングで彼が口を挟むとは思わなかったし、きっぱりと言い切る強い口調に驚いて固まってしまった。


周さんが舌打ちして、くしゃりと髪を掻き上げる。そして彼の顔を覗き込んで、


「バカ、俺は出かけるからな。余計なこと話すなよ」


と低い声で言った。その後すぐに隣に座る私を睨んだ。さっきよりも増して怖い顔をしている。


「お前も、これ以上入ってくるな。服が乾いたらすぐに帰れ、俺が戻るまでに消えろ、もし居たら消すぞ」


背筋がひやりとするような鋭い目をして周さんは言い残し、部屋を出て行った。


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