君の知らない空

◇ もっと知りたい

   
柔らかな日差しに照らされた小さな部屋が、沈黙に包まれてからどれぐらいの時間が経っただろう。


彼と二人掛けのソファにきっちり二人で座ったまま。立ち上がろうにもどこに行けばいいか分からないし、他人の部屋でうろうろすることもできない。


テレビぐらい点いていたら少しは気が紛れるだろうに、テレビ間の真っ暗なモニターは窓の外から差し込む光を映しているだけ。


このまま延々と、沈黙が続くんじゃないかと思い始めていた。


そんな沈黙を破ってくれたのは、私の手に握られていた携帯電話。


突然ぶるっと震えたから驚いて、思いきり体を起こした。隣に座っていた彼も続いて体を起こす。
しまった、彼は怪我をしているんだった。


「ごめんなさい、怪我に響いてしまった?  大丈夫ですか?」

「違う、驚いただけ」


本当なのか優しい嘘なのかわからないけど、彼は笑って返してくれた。


ほっとして携帯電話に目を落とす。優美からのメールの着信だった。



『課長のお通夜は明日、
告別式は明後日らしいよ。
わかってると思うけど、
オバチャンが騒いで
大変なことになっているよ、
明日、覚悟しなよ。』



だいたい想像できてたから驚きはなかったけど、真っ先に美香のことが気になった。だって、一番に疑われるのは美香だから。



またオバチャンに呼び出されて、キツイことを言われてたりしていないだろうか。きっと言われてるに違いない。一人で心細い思いをしているのかもしれない。


すぐに優美に返信した。


『お願い、
美香を守ってあげてね。』


と送信した後、江藤にも同じ内容のメールを送信した。


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