君の知らない空
「お願い、やめて!」
「水野、やめさせろ! お前の目的は何だ!」
綾瀬が吐き出した言葉に、先輩は待っていたと言わんばかりの笑みを浮かべた。
「もちろん金です、いくら出せます?」
「金か……先に彼らを止めろ」
先輩の指示を受けた男性らが、ゆっくりと亮から離れていった。
綾瀬の手をほどいて、駆け出す私を先輩が抱き止める。
「こんなヤツ、早く大月に引き渡してやればよかったのに。大月も頑張って捜索してたんだから」
回した腕に力を込めて、先輩が耳元で囁く。息苦しさにもがく私の首筋に、ひやりとした物が触れた。
恐怖に髪が逆立つ感覚、足の力が抜けて自分が立っている実感さえない。首筋にピタリと押し当てられたものは間違いなくナイフ。
亮と綾瀬の切迫した表情が、さらに自分の置かれた状況の悪さを告げている。
「動いたら、彼女に傷がつくから覚悟しな」
先輩が想像通りの言葉を吐く。
ところが、先輩と私の前に立つ二人の男性の様子がおかしい。何か言いたげに開いた口が、驚いているように見えて。