君の知らない空


「お願い、やめて!」

「水野、やめさせろ! お前の目的は何だ!」


綾瀬が吐き出した言葉に、先輩は待っていたと言わんばかりの笑みを浮かべた。


「もちろん金です、いくら出せます?」

「金か……先に彼らを止めろ」


先輩の指示を受けた男性らが、ゆっくりと亮から離れていった。


綾瀬の手をほどいて、駆け出す私を先輩が抱き止める。


「こんなヤツ、早く大月に引き渡してやればよかったのに。大月も頑張って捜索してたんだから」


回した腕に力を込めて、先輩が耳元で囁く。息苦しさにもがく私の首筋に、ひやりとした物が触れた。


恐怖に髪が逆立つ感覚、足の力が抜けて自分が立っている実感さえない。首筋にピタリと押し当てられたものは間違いなくナイフ。


亮と綾瀬の切迫した表情が、さらに自分の置かれた状況の悪さを告げている。


「動いたら、彼女に傷がつくから覚悟しな」


先輩が想像通りの言葉を吐く。


ところが、先輩と私の前に立つ二人の男性の様子がおかしい。何か言いたげに開いた口が、驚いているように見えて。


< 367 / 390 >

この作品をシェア

pagetop