君の知らない空



彼らとは逆に、亮の表情からは焦りが消えている。綾瀬は状況が飲み込めない様子だけど。


さすがに先輩も不思議に思ったのか、私を抱いた手が小刻みに震えてる。


「お前ら、早く綾瀬さんとヤツを……」

「そんな物騒なモノ、片付けなよ」


頼りなさそうな先輩の声を掻き消したのは、嘲笑しながらも力強い声。それは確かに私たちの背後から投げ掛けられた。


そんなはずない。
後ろはベランダだ。


「だ、誰だ!」


振り向いた瞬間、先輩が吹き飛んだ。滑るように床に叩きつけられた先輩は、壁にぶつかって止まったけど動かない。


私の目に映ったのは、にやっと笑う周さん。


「くだらないことするなよ、次は? そっちの二人?」


挑発された二人が、周さんに踊り掛かる。周さんは呆然とする私を押し退け、ひらりと舞った。


ほんの一瞬のこと。
大きな音がして、私が亮の腕の中に収まった頃には二人とも倒れて動かなくなっていた。


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