君の知らない空



周さんを見て、綾瀬が呆然としている。なぜ周さんがここに来たのか、わからなくて混乱しているのだろう。


「じゃあ、俺は帰る」


玄関から聴こえるざわめきを察知した周さんは、綾瀬に向かってにこやかに手を振った。


「待て! お前も、味方なのか?」


ベランダへと出て行く周さんを、綾瀬が引き留める。


「一応、そのつもりだけど」


周さんは素っ気なく返して、ベランダから飛び出した。


同時に厳めしい男たちが部屋になだれ込んきて、綾瀬の元に駆け寄った。綾瀬の身を案じる男たちのひとりが、亮に気づいて見据える。


「手を出すな、彼は俺たちを助けてくれた」


綾瀬の言葉が、亮と男たちの交える緊迫した視線を解いていく。


「ありがとう」


と綾瀬が礼を言うと、亮は恥ずかしそうに頷いた。


むくりと起き上がった先輩が、綾瀬を取り巻く男たちを見て蒼白な顔をしている。


さらに部屋に入ってきたのは、二人の中年の男性。ひとりは恰幅のいいスーツ姿に丸顔、もうひとりは白髪交じりの頭に細身にジーンズのラフな格好。


彼らを見た綾瀬が、唇を噛んだ。


「無事で良かった」


と零して、細身にジーンズの男が微笑む。綾瀬は何も答えずに、ふいと目を逸らした。


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