君の知らない空
「じゃあ、白木さんから挨拶してもらえる? 一言でいいから」
不意に課長から振られた彼女は、驚いて顔を引きつらせた。顔を真っ赤に染めて恥ずかしそうに俯く姿は、何だか可哀想にも見える。
オバチャン社員の二人が、「早くしろ」と言わんばかりに体を揺らして催促している。
しかし彼女を心配そうに見つめる男性社員らに気づいて、オバチャン社員は苛立ちを露わにした。
ああ……
彼女はオバチャンを敵に回したな……
私と優美は目配せして頷いた。
オバチャン社員の聞こえよがしな溜め息を聞いた彼女は、はっとして姿勢を正した。
「すみません、白木美香です……こういう仕事は初めてなので、緊張してます、よろしくお願いします」
か細い声で息つぎもせずに言い終えた彼女は、ぺこりと頭を下げた。