神様さえも朽ちらせる忌わしき呪物
「けが、してるの?」
「うん。大怪我だよ。全身ね、大火傷。僕を庇って火の海に飛び込んで矢を打ち込まれたからね」
なんとも無いことのように語る少年に、ミッシェルが息を呑む。
「きっと酷い痛みだっただろうね。それなのに僕を抱えて剣を持って…まったく、困った子だよ」
それでも嬉しそうに語る少年を、ミッシェルは羨ましく思った。
追われていても、命を張って助けてくれる人がいる。
それがどんなに恵まれていることか、少年は知っているのだろうかと怒りさえ覚えた。
幽閉され、死刑が確定し、逃げるために抗い沢山の人を殺し、それでも逃げようと走れば追っ手はなかった。
そんなミッシェルは、嫉妬から少年から目をそらした。
「…そう、なんだ」
気の利いたことなど言えるわけもなく、呟いたミッシェルに少年が笑った。