キウイの朝オレンジの夜
そして狭い浴室であたしの後ろにきて、シャワーを取る。
「――――――髪、洗ってやる」
「はい?」
何?あたしは驚いて後ろを振り返る。狭いので、すぐそこに稲葉さんの体があって、うわあと叫んでしまった。
「髪だよ。俺上手いんだぜ」
いうや否や、あたしの髪の毛を手に取り、そのままシャンプーで洗い出した。
確かに上手かった。一体どんな特技だ。自己紹介欄には書けないぞ!まあ、この男がやるんだったら女性が列を作りはするだろうけど。
頭皮マッサージなどと言いながらゆっくりと揉んでくれる。その心地よさにあたしはうっとりとなる。
湯気が立ち込める浴室で、稲葉さんは丁寧にあたしの頭を洗ってくれた。お返しにと気分もよくなっていたあたしは彼の背中を流す。
そうやって、しばらくお風呂で遊んだ。泡だらけになったり、しりとりをしたり、お湯をかけまくったりして。
途中で稲葉さんがあたしの顔を両手で挟んでゆっくりとキスをするまでは。
「――――――・・・」
「今晩は、その気になれない?」
稲葉さんは唇を離して目を細めながら聞く。
こんな綺麗な目が切なげにあたしを見てるのに。
そして、それは大好きな人なのに・・・・。