環七あやめの遊戯

思い出に浸り過ぎて、最近の彼は、現実に生きる人間と言うよりはむしろ、地に足が着かない幽霊の様な印象を周りに与えていたぐらい、現実逃避が甚だしかった。

それについては、先に書いた、彼が周りからコミュニケーションのとれない変人扱いされていた通りである。

だからこそ、後に彼にあの、恐ろしい解決策を選ばせたのも、必然的だったとも言えなくは無い。




次の日の学校の帰り道、帰り道の途中にあるコンビニから出てくる可南子を、偶然あやめは見かけた。

おやっ、と、あやめは思った。

あやめは確信した。あの特徴的な形とあの袋。確かにあそこのコンビニのあんみつを可南子は買った。

－本当に、あんみつ好きだねえ、法条さん。虫歯になっちゃわないか、俺、心配だよ。－

気付けば、あやめは駅の改札を抜け、駅構内にいた。目の前には、まばらな人だかりの中、線路近くで帰りの電車を待つ可南子の後ろ姿も発見出来た。

－しかし、どうしてこの子のあんみつを食べる姿は、俺の中で朧気なのか？－