ハッピークライシス


―血を流し過ぎたな。


朦朧とする意識をなんとか奮い起させながら、未だに血の止まらない傷口を見下ろす。

さすがに、この場所についてはレヴェンも嗅ぎつけなかったようで、追手が来る気配もない。


ようやく、ライトがひとつの旧車両を照らした。

設置された鉄製の階段をのぼり、車両の扉を開けて中へと入る。
ランプに火を灯し、ようやく一息ついた。

身体が鉛のように重く、もしこの場所まで追われていれば流石に命はなかっただろう。ユエは、ゆっくりと視線だけを動かす。小さな息遣い、人の気配がした。




「なんだ。まだいたのか、お前」



< 123 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop