元恋人の甘い痛み【完】
「元気がないみたいだけれど、どうしたの?」
「気のせいだ」
「気のせいには見えないわ」
「気にするな」
ブラックの珈琲を淹れたティーカップを差し出すと、其を受け取り一口飲む。
その表情は何処か寂し気で、いつも凛としている雷牙とは違うもう一人の雷牙だった。
気にするなと言われても普段そんな顔を見せない貴方なのに、そんな顔を見てしまったら気にしない方が無理な話。
珈琲を飲む雷牙の横へと腰を下ろし、寂し気な顔を覗き込んだ。