元恋人の甘い痛み【完】


先方が望む通りに隣りへと腰を下ろし、熱燗を手にお猪口へと酒を注ぐ。


これじゃあまるで和風キャバクラだわ。こんな事までさせるなんて雷牙ったら嫌な男だわ本当に。


今思えば雷牙の何処に惚れてたんだろうって不思議で仕方ないわね。


今の私なら絶対に惚れない。寧ろ、避ける自信あるわ。昔の私は雷牙しか知らなかったから、ただすがりたかっただけよね。


失うのが怖くて、聞き分けの良い子で居ただけ。


でも今は違う。雷牙にすがらなくても、他に男は沢山いるし、雷牙以上に良い男も沢山いるから、すがる理由なんて全くない。


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