元恋人の甘い痛み【完】
どれくらい歩いたのだろうか。最寄りの駅が見えて来た時、不意に背後から私の名を呼ぶ声がした。
「…隼人。彼女は?」
「アイツん所へ行った…」
「…そう」
「まさか相手がお前の男だとは思わなかった」
「…私の男じゃないわ。付き合っていないもの」
「そうだったのか」
「…ええ」
不意に隼人は人目も気にせず私の身体をぎゅっと抱き締める。
「俺達、また関係しないか?」
それは唐突過ぎる言葉だった。
あまりに唐突過ぎて頭が混乱し直ぐに返事が返せない。