As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「…顔が同じだからって理由だけで好きにはならないと思うけど…。」
「………。」
顔が同じならって…
結に振られた男が告白してきたことは…
何度かある。
この人は……
違うの?
「…と、とにかく!友達ならいいけどお互いのこと知らないのに付き合うどうとか有り得ないので。……じゃ、そーゆーことでっ!」
その空気に耐えられず……
私は、一目散に里中くんの前から姿を消した。
私の席の右ナナメ前……
英語の教科書を開いてのうのうと授業を受けているあいつ……。
私は怨念を送り込むかのように、
じ~……っと……
その背中を見つめていた。
いや、
もとい!
…『睨んだ』。
『中道の馬鹿!あほ!…嫌いっ!』
そうしたら……
奴は突然、振り返った。
バッチリ目が合ったから…
私は口を
『い~っ』
っと開く。
しばらくすると……
ノートを立てて、その端を指差す中道。
そこに書かれた文字…。
【かわいくねーぞ、上原柚。】
「………。」
おいおい……
そのノート、里中くんのでしょうよ。
『バーカ!』
私は口パクする。
またしばらくして……
ひょこっとノートが現れる。
【ブスっ面】
「…~っ…こんの猫かぶり……。」
…と、思わず呟いた私の頭上に……
バシンッ
と重たい愛のムチ。
「上原。静かにしろ。」
「……。だって……」
言い訳しようと中道の方を見たけれど……
ヤツは机に向かって黒板の文字を必死に写している…
フリしてる。
「…はい。すみません。」
結局あいつはお咎めナシで……
私のしゃべり損。
なんて要領いいヤツなんだ……。