As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
それから……、



着々と、学園祭の準備は進められていった。



合唱曲も決まるが、音楽室が利用できるのは数回のみ。


それまでは…私が自分で弾いたピアノの音源を、テープで流しての練習。


普段は交わることない中道とは…、この時だけは、別だった。



「曲に合わない。指揮ってどうすんの?」


もちろん指揮者初体験の中道は、悪戦苦闘。


一人じゃどうしようもなくて、頼った先が私。


変な話…、

中道の手を取って、4拍子のリズムを叩きこんでいった。


強弱の表現、各パートの入りの合図……

ピアノとの合わせ方。



教えることは山ほどで、まだまだ出番待ちの私は、それなりに真剣に教えた。
一方な中道も、ちゃんとそれに応えようとする。



この時だけは、
本当このひとときだけは……



気持ちはひとつだった。



「…大丈夫、私が中道に合わせるから。だからとにかく……しっかりと自信を持って指揮して。」





「……わかった。」


こんな従順な中道は初めてで……

思わず、頭を撫でたくなるような変な衝動があったことも嘘ではない。


けれど女子からの視線が厳しくて……


もちろん、それ以上近づくことなんてなかった。




代わりに……、




「…今日実行委員会あるって。」


「…あ、ホント?」


「各クラスの予算書の提出とか…、場所決めとか、色々議事あるみたいだから遅くなるかも。部活に連絡した方がいいかもね。」


「ん、そうする。三井くんすぐ行く?」


「…?特に用事ないし、行くよ。」


「たまにはジュース奢るよ。私、殆ど役立たずだし。」


「そんなことない。いつも助言助かるよ。…てか、むしろ俺が奢る。」


「…えっ。」


「合唱の方、頑張ってくれてんじゃん?ますますの活躍を期待して。」


「……いやいや…。」






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