Secret Lover's Night 【連載版】
最後の夜だ。そう思うと、どうにも放し難い。明日必ず時間までに駅まで送り届けると約束し、部屋へと連れ帰った。
夕食は皆で済ませてきたので、帰って早々にシャワーを交代で浴びた。長い髪を乾かしながらふと思う。これを手入れするのは大変なのではないだろうか…と。
「ちぃ、髪切ろか?」
「えー?なにー?」
ドライヤーの音でハッキリと届かなかったのだろう。首を傾げた千彩が振り返る。相変わらず薄暗い部屋の中、ベッドの上で二人きり。ふと胸を突き上げてくる欲望を、晴人は必死に抑え込んだ。
今は…まだ…そう思うのだけれど、そこに離れ難いという想いが色濃く混じって。クイッと顎を持ち上げ、深く口付ける。あの日…酔ったあの日以来だった。こうして欲望のままに唇を重ねるのは。
「んー」
「ん?あぁ、ごめん」
苦しげにパタパタと胸元を叩く千彩の手に止められ、一度唇を離す。黙って見つめていると、ふぅぅっと息を吐き、今度は千彩から唇を重ねてきた。これもまた珍しいことで。
強請られることは多々…いや、ほぼ毎日だけれど、こうして自ら唇を重ねてくることは少ない。少しの驚きに目を瞠るが、すぐさま後頭部を抱え目を閉じた。
淡く色付いた、穏やかな毎日。
千彩が待っていると思えば、早く仕事を済ませて帰ろうと自然と思えた。女からの誘いも全て断り、ただただ甘えん坊の千彩のために時間を費やしてきた。それを苦痛に思ったことはない。寧ろ、それが幸せだと思えた。
変わった。
そう改めて自覚すると、何だかとてもくすぐったい。半乾きの長い髪を梳きながら、はにかんだ顔を見られないように頬を寄せた。
「はる、さっき何て言ったん?」
「ん?あぁ、髪切ろか?って」
「なんで?はるはこれが好きなんでしょ?」
「まぁ…せやけど。一人で手入れすんの大変やで」
「うーん…」
「髪はまた伸ばせばええから、明日メーシーに切ってもらおか」
「はる、これ切ってもちさのこと嫌いにならへん?」
うるっと瞳を潤まされ、抑えていたはずの欲望がまた暴れ出す。
「参ったなぁ…」
「ん?なに?」
「いや、こっちの話」
「誰?誰と話してるん?」
「いや、そうやなくて」
ははは。と、思わず笑い声が出た。それに首を傾げる千彩が、何とも可愛くて。何とか欲望を誤魔化すために再度ドライヤーにスイッチを入れ、ふわりと長い髪を遊ばせた。
夕食は皆で済ませてきたので、帰って早々にシャワーを交代で浴びた。長い髪を乾かしながらふと思う。これを手入れするのは大変なのではないだろうか…と。
「ちぃ、髪切ろか?」
「えー?なにー?」
ドライヤーの音でハッキリと届かなかったのだろう。首を傾げた千彩が振り返る。相変わらず薄暗い部屋の中、ベッドの上で二人きり。ふと胸を突き上げてくる欲望を、晴人は必死に抑え込んだ。
今は…まだ…そう思うのだけれど、そこに離れ難いという想いが色濃く混じって。クイッと顎を持ち上げ、深く口付ける。あの日…酔ったあの日以来だった。こうして欲望のままに唇を重ねるのは。
「んー」
「ん?あぁ、ごめん」
苦しげにパタパタと胸元を叩く千彩の手に止められ、一度唇を離す。黙って見つめていると、ふぅぅっと息を吐き、今度は千彩から唇を重ねてきた。これもまた珍しいことで。
強請られることは多々…いや、ほぼ毎日だけれど、こうして自ら唇を重ねてくることは少ない。少しの驚きに目を瞠るが、すぐさま後頭部を抱え目を閉じた。
淡く色付いた、穏やかな毎日。
千彩が待っていると思えば、早く仕事を済ませて帰ろうと自然と思えた。女からの誘いも全て断り、ただただ甘えん坊の千彩のために時間を費やしてきた。それを苦痛に思ったことはない。寧ろ、それが幸せだと思えた。
変わった。
そう改めて自覚すると、何だかとてもくすぐったい。半乾きの長い髪を梳きながら、はにかんだ顔を見られないように頬を寄せた。
「はる、さっき何て言ったん?」
「ん?あぁ、髪切ろか?って」
「なんで?はるはこれが好きなんでしょ?」
「まぁ…せやけど。一人で手入れすんの大変やで」
「うーん…」
「髪はまた伸ばせばええから、明日メーシーに切ってもらおか」
「はる、これ切ってもちさのこと嫌いにならへん?」
うるっと瞳を潤まされ、抑えていたはずの欲望がまた暴れ出す。
「参ったなぁ…」
「ん?なに?」
「いや、こっちの話」
「誰?誰と話してるん?」
「いや、そうやなくて」
ははは。と、思わず笑い声が出た。それに首を傾げる千彩が、何とも可愛くて。何とか欲望を誤魔化すために再度ドライヤーにスイッチを入れ、ふわりと長い髪を遊ばせた。