Secret Lover's Night 【連載版】
取り敢えずコーヒー4本とオレンジジュースを買い、抱えながらメイクルームへと足を進めた。
「はるー!」
「あっ、こら!動かないで!」
ちょうど前髪を整えていた最中らしく、バッと振り返った千彩にメーシーが慌ててハサミを引いている。何と危ないことをしてくれるのだろう、この娘は。傷が付いていないことを確認して、メーシーもホッと安堵しているようだった。
「もうちょっとだから。ね?」
「うん!」
腰まで届きそうだった艶やかな黒髪が、バッサリと顎のラインで切り揃えられているのが見えた。何もそこまで短くせんでも…と、切ってくれと言ったくせに晴人の心情は複雑だ。
「ねぇ」
そんな晴人の腕の中からコーヒーを奪い取り、手近にあった椅子に腰掛けていたマリが立ち上がった。
「ん?」
「晴にもそんな表情出来るんだ」
「何や…どうゆう意味や、それ」
「だって、晴ってばいつだって無表情だったじゃない」
「そうか?」
「自分で気付いてなかったの?重症よ、それ」
ピンッと額を小突かれ、改めて鏡に映る自分の顔を眺めてみる。いつもとさほど変わらない気もするのだが、多少は…緩んでいるかもしてれない。その程度のものだ。
「ベッドの上だってそんな顔しなかったのに。何か妬けちゃう」
「いやいや。人聞きの悪い…」
「あー!おねーさんダメ!」
頬を抓るマリの手を、カットが終わって漸く自由になった千彩が駆け寄って掴む。それに驚いたマリが、そのままの状態で一歩後ずさった。
「はるはちさの…カレシ?やから触ったダメ!ちさのはるとなの!」
まるで「プンプン!」とでも言いそうなくらいに、千彩は頬を膨らませてマリに抗議をしている。その姿にプッと笑い声を漏らしたのは、晴人だけではなかった。恵介もメーシーも、睨みつけられているはずのマリでさえ、千彩のあまりに可愛らしいヤキモチに頬を緩ませている。
「もー!なんで笑うのっ!」
「あはは。おいで、ちぃ」
「はるー、なんで笑ってんの?」
「んー?何でもないよ。そうやな。千彩の晴人やもんな」
更に膨らせたその頬を両手で挟むと、ぷぅーっと空気が抜ける音がした。それを聞きながら、「絶対ふ抜けた顔してるわ…」と、自覚できただけマシかもしれない。
「はるー!」
「あっ、こら!動かないで!」
ちょうど前髪を整えていた最中らしく、バッと振り返った千彩にメーシーが慌ててハサミを引いている。何と危ないことをしてくれるのだろう、この娘は。傷が付いていないことを確認して、メーシーもホッと安堵しているようだった。
「もうちょっとだから。ね?」
「うん!」
腰まで届きそうだった艶やかな黒髪が、バッサリと顎のラインで切り揃えられているのが見えた。何もそこまで短くせんでも…と、切ってくれと言ったくせに晴人の心情は複雑だ。
「ねぇ」
そんな晴人の腕の中からコーヒーを奪い取り、手近にあった椅子に腰掛けていたマリが立ち上がった。
「ん?」
「晴にもそんな表情出来るんだ」
「何や…どうゆう意味や、それ」
「だって、晴ってばいつだって無表情だったじゃない」
「そうか?」
「自分で気付いてなかったの?重症よ、それ」
ピンッと額を小突かれ、改めて鏡に映る自分の顔を眺めてみる。いつもとさほど変わらない気もするのだが、多少は…緩んでいるかもしてれない。その程度のものだ。
「ベッドの上だってそんな顔しなかったのに。何か妬けちゃう」
「いやいや。人聞きの悪い…」
「あー!おねーさんダメ!」
頬を抓るマリの手を、カットが終わって漸く自由になった千彩が駆け寄って掴む。それに驚いたマリが、そのままの状態で一歩後ずさった。
「はるはちさの…カレシ?やから触ったダメ!ちさのはるとなの!」
まるで「プンプン!」とでも言いそうなくらいに、千彩は頬を膨らませてマリに抗議をしている。その姿にプッと笑い声を漏らしたのは、晴人だけではなかった。恵介もメーシーも、睨みつけられているはずのマリでさえ、千彩のあまりに可愛らしいヤキモチに頬を緩ませている。
「もー!なんで笑うのっ!」
「あはは。おいで、ちぃ」
「はるー、なんで笑ってんの?」
「んー?何でもないよ。そうやな。千彩の晴人やもんな」
更に膨らせたその頬を両手で挟むと、ぷぅーっと空気が抜ける音がした。それを聞きながら、「絶対ふ抜けた顔してるわ…」と、自覚できただけマシかもしれない。